
認知症ケア技術であるユマニチュードでは、ケアの目的を『相手と良い関係を結ぶこと』と定めています。
相手と良い関係を結ぶために、ケアを一連の物語のように行う『ケアの5つのステップ』という技術について、分かりやすく説明します!!
①出会いの準備(来訪を告げる)

誰かが会いに来てくれるのは、誰でも嬉しいものです。しかし、急に目の前に人が現れたらどうでしょう??
びっくりしてしまい、嬉しく感じられませんよね。
その為、自分の来訪を告げて、プライベートな空間に入っていいのか了承を得る必要があります。
来訪を告げる具体的な方法として『ノック』があります。
ノックなどの物を叩く音は、難聴の方でも聞き取りやすいという特徴があります。
部屋に入る前には3回ノックをして3秒待ちましょう。
返事がない場合は再びノックをして3秒待ちます。
認知症の方は理解や判断に時間がかかる傾向があり、『どうぞ』と迎える準備をするまでに時間がかかる可能性があるため、『待つ』ということがとても大切です。
2回目のノックで返事がなかった場合は、様子をみながら部屋に入りましょう。
①3回ノックをして3秒待つ → 返事があれば部屋に入る
②返事がない場合は再度3回ノックして3秒待つ → 返事があれば部屋に入る
③2回目のノックで返事がない場合は、様子をみながら部屋に入る
②ケアの準備(良い関係を結ぶ)

認知症の方は認識出来る範囲が狭いため、部屋に入ったら顔が向いている方から近づきましょう。
相手があなたを認識したら、ケアの話はせずに『会えてうれしい』という気持ちを伝えるようにしましょう。
『会えてうれしい』という気持ちを伝える際、ユマニチュードにおけるコミュニケーションの4つの柱を用いて良い関係を築くことを意識しましょう。
※ユマニチュードの4つの柱については下記のリンクからどうぞ
良い関係が築けたと感じたら、最後にケアの提案をします。
言葉で同意が得られない場合は、『いや』と言われたり、体をこわばらせたりと拒否的なメッセージがなければケアを始めます。
拒否的なメッセージがあった場合は、3分誘ってダメなら一度諦めましょう。

③知覚の連結(実際のケア)

ケアの同意が得られたら、すぐにケアを始めましょう。
忘れ物をして取りに行ったりすると、せっかく結んだ良い関係が断たれてしまう可能性があります。
そのため、準備を整えてから部屋へ赴くことがとても大切になります。
ケアを行う際に、最も気をつけるべきことは『五感から得られる情報を矛盾させない』ということです。
正面から近づき、安心出来るように声をかけたとしても、相手の手を強く掴んでしまうと『大切に思っています』と『自由を奪っています』という矛盾したメッセージが伝わってしまい、相手が混乱してしまいます。
相手を混乱させてしまわないように、自分が相手に発しているメッセージを意識しましょう。
相手に発しているメッセージに矛盾がないようにすることで、良い関係を維持したままケアを行うことができます。
感情の固定(ともに過ごした良い時間を振り返る)

行なったケアがとても心地よいものであったことを一緒に振り返りましょう。
認知症の方は、感情に関する記憶が他の記憶より残りやすいという特徴があります。

再開の約束(次のケアへつなぐ)

人は良い時間を過ごした後には『また会いたい』と思うものです。
『また明日来ますね』『何時にまた来ますね』など具体的に説明するように心がけましょう。
覚えていることが難しい方には、カレンダーやノートに書いて本人がいつでも見れるように残しておくと、次のケアを行いやすくなります。
まとめ
今回は、認知症ケアの技術であるユマニチュードの『ケアの5つのステップ』について説明させていただきました!!
認知症の方は、不快な感情の記憶に関しても残りやすい傾向にあります。
そのため、一度不快なケアを行なってしまっただけで、次回以降のケアがスムーズに行えなくなることも珍しくありません。

①出会いの準備(来訪を告げる)
②ケアの準備(良い関係を結ぶ)
③知覚の連結(実際のケア)
④感情の固定(ともに過ごした良い時間を振り返る)
⑤再開の約束(次のケアへつなぐ)