
・軽く触れただけで痛い痛いと大声を出す
・もう治っているはずなのにいつまでも痛みの訴えがある
・痛みの訴えはあるのに検査しても何も見つからない
このような症状の方に出会ったことはありませんか??
もしかしたらその方は『慢性疼痛』かもしれません。
今回は『慢性疼痛』のメカニズムと治療の考え方について分かりやすく説明します!!
『慢性疼痛』とは??
つまり
治っているはずなのに、まだ痛い
というのが『慢性疼痛』です。
慢性疼痛には様々な症状が含まれますが、最もよく聞かれる症状が『腰痛』だと言われています。
世界的に見ても生活の質(QOL:quality of life)低下の原因第1位は『腰痛』です。
国民の中でも約7.8%に方が慢性腰痛の症状を患っており、慢性疼痛患者の58.4%に慢性腰痛の訴えがあったとの報告もあります。

『慢性疼痛』になりやすい人
①女性に多い(腰痛・肩こり・手足の痛み etc.)
②田舎の畑仕事をしている人よりも都会のデスクワークをしている人に多い
『慢性疼痛』の特徴
①痛くないだろう刺激ですごく痛がる
②身体症状が複数ある(あちこち痛い)
※運動器の不具合による痛みは一貫性があり、痛くない姿勢がある場合が多い
『慢性疼痛』のメカニズム

上の図を簡単に表現すると
①痛い
②痛いと感じる状態が続く
③脳がその痛みを覚える
④もう痛くないはずなのに痛いと感じる
ということです。


前の図で説明した『脳が痛みを覚える』『もう痛くないはずなのに痛いと感じる』という症状は『感作(過敏化)』といいます。
慢性疼痛を理解する上でもう一つ重要なのが、上の図(青部分)の疼痛抑制系機能不全です。
疼痛抑制系とは、痛みを和らげる為に人に備わっている機能です。
痛み刺激などの不快症状が続くと、この機能が低下して痛みを感じやすい体質になります。
つまり『慢性疼痛』とは
感作(痛みに過敏) + 疼痛抑制系機能不全(痛みを和らげる機能の低下)
が合わさって慢性的に痛みが生じる体質にあることです。
『慢性疼痛』治す考え方
慢性疼痛を治すためには、EIH(運動誘発性鎮痛)の機能を再獲得してもらうことが必要です。
EIHの機能を再獲得するには『運動』+『教育』の二つを行う必要があります。
ここでいう『教育』とは”脳をつかう”と理解してもらえればと思います。
脳を使わずにただ運動をしてもEIHの効果はあまり得られません。
『運動』+『教育』を意識して治療していくことにより、もともと体に備わっている疼痛抑制機能を高めていくことができます。


EIH効果のメカニズムを少し細かく説明すると上の図のようになります。
痛み(Pain)が生じるとγアミノ酪酸(GABA)という物質がドーパミンを抑制し、脳報酬系の機能を低下させてしまいます。
これによりもともと体に備わっている疼痛抑制機能が働かなくなるため、痛みの出やすい体質となります。
運動はGABAによるドーパミン抑制を解除し、脳報酬系を正常に機能させる手助けをするため、EIH効果(運動誘発性鎮痛の効果)を高めます。

つまり『脳を使った運動を行う』→『痛みを感じづらい体質になる』ということですね!!
運動の選び方
運動の種類
【結論】どのような種類の運動でも効果に大きな差はない
最近の研究結果でみても運動の種類による効果の差はあまりないようです。

運動の注意点①
今まで行ったことのない運動では鎮痛効果を発揮するエンドカンナビノイドの生成量が少なくなることが分かっています。
体に良い運動であったとしても、『痛みを和らげる』という目的であればやったことのある運動を行うこと望ましいでしょう。
運動の注意点②

運動の種類による鎮痛効果の差はありませんでしたが、やり方には注意しなければなりません。
上記の大切な要素は『運動』と『教育(脳を使う)』という要素が含まれているため、効果的と考えられます。
おすすめの運動は??

『運動』と『教育』の二つの条件を満たすMind-Body exerciseが慢性疼痛に効果があると実証されています。
運動を勧める際には、行ったことのあるものや興味のあるものを選びましょう。
運動が嫌いな人や興味がない人には日常生活(家事など)も十分な運動になることを説明し、出来ることをやってもらうよう促しましょう。
運動強度はどのぐらいが良い??

運動の強度は心地よいと感じる程度の「好みの強度」が望ましいと言われています。
これは治療対象が『脳』であるため、決まった強度よりも本人の心地よさが重要になるものと考えられます。
高強度の運動を行うと痛みが強くなることがあるため、おすすめしません。
上の図のEIH効果の減弱、痛覚過敏だけでなく、単純にやりすぎて痛めるリスクもあります。

どのぐらいで効果が出る??

運動アドヒアランスとは『運動を続ける意思』のことです。
1、2回運動しただけでは鎮痛効果を感じることはできません。
1ヶ月程運動を続けていくと効果を感じてくる方も出てきますが、研究結果上では2ヶ月あたりが効果のピークと考えられています。

まとめ
②慢性疼痛の痛みを和らげるにはEIH(運動誘発性鎮痛)が必要
③運動の選び方
・種類は何でも効果に差がない(生活歴に合った楽しめるものを)
・Mind-Body Exerciseのように心(脳)と体を使うことが大切
・運動開始後2ヶ月が効果大(運動アドヒアランスを高めよう)

今回は慢性疼痛についてお話させて頂きました!
疾患等による急性痛の場合は運動で痛みが増す場合もありますので十分注意しましょう!
この記事が誰かのためになれば嬉しく思います!!
介護老人保健施設にて勤務中の現役理学療法士キクマです!!